世にも奇妙な物語『車中の出来事』のネタバレとオチを解説。車掌の正体は?
2016年10月8日放送の世にも奇妙な物語・秋の特別編の4作品の1つ、北村一輝さん主演の『車中の出来事』の内容のネタバレとオチを解説していきます。
3人の男が、ある麻薬取引事件を巡って駆け引きを行い、状況が二転三転して一秒たりとも目が離せないこの作品。
なるべく分かりやすくネタバレをお送り出来るよう頑張ります。
また原作では最後車掌の正体があやふやになって終わるのですが、そこについても触れていきたいと思います。
※コチラの作品は、原作があり、世にも奇妙な物語本編と相違点が無さそうなので、本編のネタバレは追記しない可能性があります。
最終更新日:10月8日
- 原作とのオチの大きな違いについて追記しました。
『車中の出来事』の内容とオチのネタバレと解説
内容が少々複雑なので、なるべく要点だけをまとめて、解釈的にネタバレをお送りしています。
『車中の出来事』の原作は我孫子武丸さんの短編集「たけまる文庫・謎の巻」の4作目に収録されています。
【話の導入】
深夜の上り列車の最後尾の車両に、ツイードのスーツを羽織った男が乗り込む。
車両には、酔っ払った労務者風の男、そして奥の席には猪首の男と優男が2人並んで座っていた。
ツイードの男は刑事を名乗り、 猪首の男と優男に近づく。
猪首の男は自分も刑事で、現在犯罪者(優男)を護送中と説明。
優男は自分は指名手配犯の男と顔が似てるだけと主張。
そこで初めてツイードの男は優男が4日前に起きた大川組との麻薬取引事件の犯人、そして唯一逃亡者である俣野昇であること気づく。
一人は逮捕され、一人は射殺、そしてもう一人の俣野は金とブツを持って逃亡。
更には俣野は警察を2人殺害しているとのこと。
【ここから3人の男たちによる探り合いが始まる】
※ツイードの男→ツ、猪首の男→猪、優男(俣野かもしれない人物)→優
※原作では陰のリーダーはカワウソではなく、顔も名前も知らない存在となっています。
ツ:これだけの大事件の犯人を一人で護送中というのも不思議ですね。
猪:オレを疑っているのか?
ツ:いえいえ。
ただ今は警察が総力を挙げて、俣野を追っています。
そんな中どう俣野が逃亡を企てるのかちょっと考えてみたんですよ。
ご存知だと思いますが、捕まった犯行グループには陰のリーダーがいて、その男が刑事と護送中の犯人を装って逃亡するという計画を企てんじゃないかと。
猪:つまりそのリーダーがオレだと?
ツ:そういうことになりますね。
猪:ならコレは知っているか?
リーダーの顔と名前を知っていたのは射殺された永田継男だけであり、オレ達は指示されただけと捕まった男は主張していた。
捕まった男が言い逃れにでっち上げたのであれば、永田をリーダーにしてしまえばよいだけだ。
つまり捕まった男は嘘を言っておらず、リーダーは実在し、俣野も顔を知らないということになる。
なので俣野昇が顔も名前もリーダーに近づくのは無理だ。
ツ:リーダーから近づいてきた可能性もあるのでは?
猪:リーダーが危険を侵してまで俣野を助けるメリットが無い。
ツ:俣野が金とブツを持っているのであれば、リーダーにもメリットは有るのでは。
猪:俣野だってそこまで馬鹿じゃない。
リーダーに金とブツの在り処を教えれば、自分は口封じに殺されることくらい分かっているはずだ。
ツ:俣野も余裕が無いのかもしれません。
警察に捕まったら警官殺しの罪で死刑もあり得るし、大川組に捕まったら海に沈められる。
藁にすがるような気持ちを考えればリーダーに協力するのも無理はないのでは?
いや、大川組がほぼ全員為す術なく捕まった中、金とブツの持ち逃げに成功したことを考えると、俣野昇が今回の取引の密告した可能性もあるのでは?
猪:なるほど…しかし一つ腑に落ちないことがある。
これだけ事件のこと知っているのに、何故俣野のことに最初気づかなかったのか?
お前は俣野が指名手配犯という単語を出して初めて気付いた風だった。
知っているか?リーダーとして怪しい人物は大川組の能勢という人物が挙がっている。
そいつがお前で、隙を見て俣野昇を奪うという魂胆なんじゃないのか?
ツ:仮に自分がその能勢という人物だったとしてとして、何故わざわざ一人で乗ってくるのです?
大勢で乗り込めば良いのでは?
猪:たくさんだと目立つし、刑事と思わせておいたほうが俣野昇も逃げないだろう。
なるほどと、観念する様子を見せるツイードの男。
しかしあくまで憶測のやり取り上の話、 実は猪首の男が警察で有名な平田巡査であることを知っていると言う。
猪:じゃあ何でこんな茶番を持ちかけた?
ツ:ゲームですよ。
猪:たまたま、深夜の駅に乗り込んだら知っている刑事の顔がたまたまあったから、ゲームを持ち込んだということか?
ありえん、お前が俣野の担当刑事ならまだしも…
いや、実はお前は担当刑事で、手柄を横取りするつもりで乗ってきたのであれば有り得なくもないな。
ツ:手柄の為に警察を殺してまで?
猪:よほど手柄が必要な事情がある、もしくは金とブツが目当てなのかもしれん。
ツ:それなら、相棒も連れずに一人で護送しているアナタも怪しいのでは?
猪:…相棒は事件で死んだ、俣野が撃った。
それはと…口ごもるツイードの男。
ツ:俣野に撃たれたという証拠はあるのですか?
猪:無いが、他の奴らの線状痕と一致しなかった。
ツ:警察の撃ったタマは調べていないのですか?
では流れ弾の可能性もあるのでは?
猪:可能性は無いとは言えないが、拳銃を持った犯人が逃げているなら疑う必要もない。
とにかく俣野が逃げたこと、2人の警官が射殺されたこと、金とブツが消えたことは事実だ。
ツ:そもそもホントに俣野が撃ったのかも怪しいかもしれない。
実は警察側に犯人の仲間がいたという可能性もある。
ここからツイードの男のおとぎ話と称した仮説が始まる。
ツ:暴力団関係担当の刑事がいたと仮定します。
商売上、犯罪者と持ちつ持たれつの関係はよくあること。
最初は押収物の横流しなどの汚職警官レベルのものだった。
しかしこの刑事は段々と欲を出し、遂に麻薬に手を出した。
ツ:そして持ちつ持たれつの関係にあった男の名を永田と仮定します。
その永田という男に密輸をさせて取引は順調であった。
しかし段々規模が大きなリ、永田の存在が邪魔になった刑事は、永田を消そうとする。
ツ:それが今回の事件、大川組との大取引です。
永田も消して、お金もゲットし、大手柄もゲットと一石三鳥を狙うというもの。
計画では、小麦粉を永田に渡し、それを元に大川組との大金の取引を持ちかける。
そしてその現場のタレコミを入れ、警官と一緒に流れ込んだ隙に永田を射殺し、真相を知るものは消すというもの。
猪:相棒もそいつが殺したと?
ツ:相棒も何かに気付いていて邪魔になったので、逃げた犯人に撃たれるというシナリオだったのかもしれません。
しかし、俣野が金とブツ(小麦粉)を持って逃げてしまったことで計画が狂ってしまった。
猪:じゃあ密告したのは俣野という可能性もゼロではないんじゃないのか?
ここで優男の様子に変化が起きる。
優:オレは密告していない、全てはお前の計略なのか?
猪:何を言っている?
優:許さない!ツグオ(死んだ永田)の敵はオレがとる。
優男が猪首の男に突っかかる。
暴れるなと取り押さえるようとする猪首の男。
もみ合っている隙に、ツイードの男はカバンから銃を取り出し、 猪首の男のこめかみに当てる。
そして優男に指示を出す、「手錠かけろ」と。
捕まる猪首の男、そして一息つくツイードの男。
優:今後どうなる?
ツ:君を護送して、この汚職警官は引き渡す。
優:コイツは死刑になるのか?
ツ:分からんが、ムショの中では元警官は…
カシャ!
ツ:!?
何と優男はツイードの男に手錠を掛ける。
ツ:俣野どういうことだ?
優:悪いが、おれは俣野じゃないんだ。
猪:よくもまぁそんなにでまかせを言えたもんだ。
ツ:!?
猪:お前をおびき出すための計画だ。
コイツは俣野に似ている警官で、この計画の為に駆り出された。
本物の俣野はとっくに捕まえた。
しかし城島と同様、リーダーの顔を知らないという。
つまりリーダーも俣野の顔をよく知らないということだ。
猪:今まで永田のタレコミがあっても、あと一歩で逃げられていた。
つまり署内で情報が漏れているということ。
なので今回はギリギリまで相棒と2人で情報を隠していた。
永田は捕まえたが、それでも俣野に逃げられ、相棒も撃たれるという始末だったが…
悔しそうな猪首の男に代わって優男が話を続ける。
優:そこで署内の情報が漏れているのであれば、俣野を電車で護送中という情報を流せばリーダーがひょっこり現れると思った。
ただ万が一失敗して、本物の俣野を奪われても困るので、リーダーが俣野の顔をちゃんと知らないということを利用して、顔が似ている自分が借り出されたという訳だ。
ツ:なるほど…
ここでツイードの男は観念したかのように思えた。
しかし次の瞬間、発煙筒が出てきて周囲は煙に巻かれる。
何ともう一人いた労務者風の男はツイードの男の仲間だったのだ。
そして良いタイミングでホームに着く電車。
ホームに逃げようとするツイードの男を追おうとする警察2人、しかし労務者風の男に阻まれる。
後ろを振り返りながら、上手く逃げれたと思ったツイードの男。
しかし前を向いた瞬間、そこには車掌の姿が。
「危険物の持ち込みは困りますね。-こちらにいただきましょうか。」
何と車掌も警察の仲間だったのだ…(終)
本編が気になる方は本編が載せられた作品「たけまる文庫・謎の巻」をお読み下さい。
【追記】
世にも奇妙な物語にはオリジナルなのか、原作では描かれなかったコトの真相なのか分かりませんが、捕まえたツイードの男を護送する猪首の男とのシーンがあります。
列車が着いたら、お前は、ホームで待ち受けている署のメンバーに引き渡される。
それまでの短い間だが、最後の酒だ、しっかり味わえ。
そう言って酒を酌み交わす猪首の男とツイードの男。
しかしそこで衝撃の事実が語られる。
何とツイードの男の正体はカゲのリーダー(カワウソ)などではなく、大川組のボスだということ。
どういうことだ?と驚く猪首の男。
そして、酒を飲んだ2人は深い眠りにオチてしまう。
酒を運んできた、販売の女こそが”カワウソ”だったということでストーリーは終えます。
解説
金とブツを持って逃亡した俣野がある日の深夜の電車のある車両で護送されるという情報を手に入れたツイードの男が、あの手この手で俣野に「実はその猪首の男は刑事ではなく、今回の取引を持ちかけたリーダーであり、お前は嵌められたんだ」と信じ込ませようとします。
そして何とか信じさせることに成功し、優男に暴れさせ、その隙に猪首の男を手錠で縛り、そのまま刑事のフリをしながら俣野に金とブツの在り処を吐かせるという魂胆でした。
しかし、実はこの男は俣野ではなく、護送中という情報を手に入れた影のリーダーを釣るために警察が用意した罠でした。
ツイードの男の誤算は自分が俣野の顔をちゃんと知らないということと、そのことが警察にバレていたということ。
だが、ツイードの男も罠である可能性も睨んでおり、こっそり仲間(労務者風の男)を車両に忍び込ませて、何とかその場を逃れようとします。
最後はこのまま逃げられて終わるのかと思ったら、更に警察側も用意周到で車掌に扮した警察を配置しており、ツイードの男を捕まえることに成功します。
またツイードの男がおとぎ話に出てきたように、ホントに暴力団関係の刑事だったかは明らかにされていませんが、俣野が護送されているという警察内部の人間しか知らない情報を知ることが出来たことや、その他刑事の事情に詳しかったことを考えると恐らくはそうなのでしょう。
実はこのツイードの男も黒幕の刑事の指示で動いている可能性も無きにしもあらずですが…
ちなみにオリジナルでは、猪首の男、ツイードの男、優男、労務者風の男、車掌以外には登場人物はいません。
ただ著者の最後に我孫子武丸さんはミステリーの読者を欺く手法を用いていると解説されています。
そう考えると、原作もツイードの男はリーダーではないのかもしれませんね…
【感想】
会話している時は、どっちが本当に犯人なのか全然分からず、状況が二転三転していくのが非常に面白いですね。
また相棒が死んだという情報を元に、それは気の毒にと心配するふりして、すぐさまおとぎ話で揺さぶりにかけたツイードの男の頭の回転の良さには驚きです。
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